Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

布団の中から蜂起せよ: アナーカ・フェミニズムのための断章 | 高島 鈴

素晴らしい。本当に素晴らしい本に出会えた。間違いなく 2022 年の一番の読書である。

人生の 10 冊を選ばなければならないなら、僕はこの本をきっと入れるだろう。


アナーカ・フェミニストの高島鈴さんのエッセイ集、『布団の中から蜂起せよ』を読んだ。

この方は「巨大都市殺し」という字面が物騒なタイトルのエッセイを書いている。僕はそのエッセイでその名を初めて知った。

このエッセイを知ったのは左翼フェミニストがマッチングアプリを使って異性と会う時の基準、みたいな話をしているツイートだったと思う。たしか Twitter のアルゴリズムに乗って流れてきた。偶然の出会いとかいうやつだ。

そんなものに関心が湧く自分も大概といえば大概である。自分の大概さは、自分が一番よく心得ている。

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僕はこのエッセイや本書も含めいくつか高島さんの文章を読んだ。

ただただ単純に感動した。それ以外の言葉がない。


こんなことは人生でそう何度もあることではない。

僕も映画や東京という街の散策を通じて、家族は呪いであるということや、景観は潜在意識に既存の価値観をすり込むと認知した。僕も儀礼なんて大っ嫌いだし、テトリスは大好きだ。

僕が本書を大好きになったことに理由はほとんどそれしかない。いや、もちろんもっとたくさんのメッセージが込められているだろう。でも僕にとっては、ただそれだけのことを誰も書いていない絶望から救ってくれた。それだけで価値がある。

なお、僕はまったくアナキストではない(ていうかそれがどういう立場なのかさっぱり理解していない)し、フェミニストでもない。

でも「あなたに死なないでほしい」と手を変え品を変え、ときに力強く、ときに絶望の淵から、ときに真っ直ぐに前を見据えながら*1語る言葉に圧倒される。


素晴らしい。本書は素晴らしい。

そして何よりこの世界が素晴らしい。本書を読む前と後で、世界の素晴らしさの認知の仕方が変わるだろう。素晴らしいということは愚かではないことを意味しない。愚かさと素晴らしさが共存しているのだ。

改めて僕は生きなければならないと思った。僕のために、そして名も知らぬ僕達のために。

*1:もちろん著者の顔なんて見ていないのだけど、なんとなくそんな気がした。