Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書) | 大木 毅

『独ソ戦』という本を読んだ。

最近、戦争について話題にしていることが多い。あんまり戦争について知らないであれやこれや言うのもあれなので、知ろうと思って勉強している。


僕は昔から、ヒトラーに興味があった。どれくらい昔なのかと言うと、小学校高学年か中学生のときには興味があったと思う。

なぜなのかはよくわからない。子どもながらに独裁者というものに憧れていたのか。それとも誰も彼がどのような人なのかを教えてくれないから自分で知ろうとしたのか。もしくはネトウヨ気質みたいなのが既にあって枢軸国側だった日本を肯定するためにヒトラーを肯定しようとしていたのか(念のため書いておくけど、いまはそういう気持ちはない)。おおかたこのどれかか全部だろう。

実家にはヒトラーにまつわる本が何冊かあった。自分で買ったものである。ほとんどは大学生のうちに読んだものだと思う。

中学生のときには興味があったけど、どう学べばいいのかよくわかっていなかったのだと思う。大人になると、どんなセンシティブなことも勉強する方法は知っている。しかし、勉強を実際にするとなると躊躇が発生して案外勉強しなかったりする。大学生のときに勉強をしたのはちょうどいい時期だったのかもしれない。


さて。『独ソ戦』にも当然ヒトラーは登場する。第二次世界大戦は初期の頃、ポーランド侵攻、フランスのパリ占領などナチスドイツの圧倒的な武力による支配から始まる。

ここでヒトラーがした軍事的な指示を僕は初めて学んだ。演説やユダヤ人迫害などについては学んだことはあっても彼がどんな軍事的な戦果をあげたのかを知らなかった(ちなみに、彼には軍事的な才能も実績もほぼ何もないことが読むとわかる)。

ナチスドイツは途中まではソ連を圧倒するも、スターリン率いるソ連軍も粘り強く対抗を続け、「作戦術」が機能し始めてからソ連がドイツを圧倒し始める。その他、ソ連のスターリン独裁体制であるが故の弱み、そもそも杜撰だったドイツ陸軍や国防軍の計画、ソ連という土地だからこそ発生した想定外などなど、これらの詳細がこの『独ソ戦』では記述されている。

この本には、独ソ戦は単なる領土争いといったものではなく、ヒトラーのイデオロギーに基づく戦争だったとされる。スラヴ民族を蔑み、彼らの土地を植民地支配した帝国を作るための算段がナチスドイツによって詳細に作られていたことからも、ソ連を倒すことがいかに重要な位置付けだったかがわかる。

しかしだからこそ、ヒトラーは単なる勝ち負けや和平ではなく最後まで闘いにこだわった。スターリングラードがほぼほぼ陥落したのに撃滅にこだわったのもそのためだ。その結果どうなったのかは僕が語るまでもないだろう。


読み終えたあとに、えも言われぬ気持ちになった。

最初に思ったことは、全員悪人だなと思った。ヒトラーも悪人だし、スターリンも悪人だし、ドイツ軍も悪人だしソ連軍も悪人だ。イギリスもフランスも(ベルサイユ条約でドイツを追い詰めたことが第二次世界大戦の遠因と考えれば)被害者だけでなく加害者でもある。

なんだかやるせない。

あと、自分が第二次世界大戦について何も知らないんだな、ということが本書だけでもよくわかった。

モスクワでの争いをしているときに日本が真珠湾攻撃を起こして太平洋戦争に突入するとか、泥沼の様相を呈している独ソ戦の裏でノルマンディー上陸作戦*1が成功して希望の光がさすとか。知らないことの裏でちゃんと知っていることが起きている。

自分の知っているや映画や教科書で見聞きしたことって一部でしかなくて、その裏で色々なことが起きていて、ひとつひとつのことに判断を下してこの結果になったんだなということが本当によくわかった。

もうしばらく、戦争について勉強しようと思う。

*1:映画プライベート・ライアンの舞台である。