技術革新
昔は世界を変える大発明家とか、科学者っていうのは既存の研究とは何も関係ないところから大発見をするのだというようになぜか思い込んでいた。冷静に考えるとそんなわけはない。どんな発見も、先人の発見の上に積み重なっているものだ。
技術も同様だ。「全く新しい技術!」と喧伝されているもの、人々が思い込んでいるものが実際にはそこまで新しいものばかりでないというのはよくある。スマートフォンはここ10年で人類の生活を一変させた機械で革新的な発明だ。しかし、現在世界で最も使われているスマートフォンの OS といえば Android で、 Android は Linux カーネルを採用しており、その Linux カーネルは Unix を参考に作成されたものだ*1。そう考えると、スマートフォンによる革新を支えている技術は 1970 年ごろの、つまり今から50年近く前のことになる。
「既存の技術が完全に無価値になる」という現象が全く無いとは言わない。しかし、技術が絶滅に至るのはほとんどの場合は「政治的理由」*2であって技術自体の価値が勝手にすりへっていくわけではない。既存の技術が少しずつ形を変えていき、革新をもたらす。その際に過去の技術は(目立たなくはなるかもしれないが)全く利用されないということはない。技術は積み重ねなのだ、科学、数学と同じように。
僕の考え
技術偏重主義への不満
世の中には新しい技術を使うことにインセンティブを感じる人がいる。僕はそれが好きじゃない。
技術はあくまでも課題解決のため、あるいは顧客が求める「価値」のために使われるべきだ。その課題の解決のためなら、古めかしい技術を使おうが新しい技術を使おうが、顧客のためになるのであればどちらでもかまわないだろうと思う。
また、先進的な技術の部分については時間と人を割いてコミットをしたが、例えばインターフェースのような部分には全然リソースを割かないといった不均衡もおかしいと思う。Web アプリケーションであればフロントエンド、バックエンド、ミドルウェアなど全部の要素が十分に考えられて初めて「プロダクト」と言えるはずだ。これがバックエンドにはリソースを割いたけど使いにくいUIの頻繁に 502 を返す Web アプリケーションになってしまったら、結局バックエンドに割いたリソースも無駄ではないか。
技術者として
前述のように技術は積み重ねだ。ほとんどの技術は既存の技術の延長にある。だからこそ、既存の技術を「不要だ」とか「誰でもできるからうちではやらない」などと切り捨てるのは御免被りたい。そうやって過去の技術を無視した先にあるのは、既存の技術さえまともに使えないダメな開発者になる未来だからだ。
ひとりの技術者として、僕が考えて実施していきたいのは、技術のひとつひとつを尊重していくことだ。どんなことも学び吸収することだ。
既存の枠組みを利用したからこそ、新たな技術が生きることもある。新しい技術ばかり追いかけて、既存の枠組みを知らないから価値につなげられないということだってある。新しい技術だけでは仕事にならない。
しかし、古い技術だけでは仕事は変わらない、変えられない。新たな技術も学び、自分が提供できるものの種類をもっと増やしていく必要がある。
会社員として
そして技術を使って作るものは結局「モノ」だ。ハードウェアだろうがソフトウェアだろうが、僕らはモノを作っていることに変わりはない。僕らは最終的にはモノを作り、どんな形であれ「顧客に価値を提供する」んだ。
それを実現するために僕は仕事をしている。
顧客に価値を届けることの難しさはどれほど技術が進歩してもどうしてか全く変わらない。いくつものプロジェクトが炎上し、破綻しても、人類は未だにソフトウェア開発に対するベストプラクティスを構築することができていない。結局永遠にできないのだろう。
容易に解決できない課題こそ面白く感じるし、自分も自分の力の及ぶ限りで貢献したいと思う。チームのためにできることなら何でもするのだ、そう『アジャイルサムライ』に書いてあった。
まとめ
「技術」という言葉から思いつく限りのことを書いてみた。『アジャイルサムライ』を読んで感動したせいか、途中から少し熱が入った。
僕は技術者としてどうありたいのだろうか、ということを少し考えて言葉にしてみた。まだまだ抽象的で理想論のような気がする。意識してあまり固有名詞を出さないようにしたし、なるべく技術の詳細にも触れないようにした。あと、人から言われたイラッときた発言への反論もいくつかある。
また自分の仕事の姿勢を振り返るときに読もうと思う。
- 作者: Jonathan Rasmusson,西村直人,角谷信太郎,近藤修平,角掛拓未
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2011/07/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 42人 クリック: 1,991回
- この商品を含むブログ (257件) を見る
- 作者: Andrew Hunt,David Thomas,村上雅章
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2016/10/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (8件) を見る