あぁきっと、 僕はこの人のことを一生好きなんだろうなと思う瞬間がある。
森博嗣氏の『すべてがFになる』(講談社文庫)の表紙に書いてある*1フレーズを観た瞬間にハマると確信したし、 村山由佳さんの『夜明けまで1マイル』を読んだ時も似たような感覚を覚えたのを覚えている。音楽なんかは特に顕著で、聴いた瞬間好きな人はきっと一生好きになる。
そして、このブログでとりあげたことがあるかどうかは覚えてないのだけれど、伊藤計劃氏も僕がきっと一生好きな人のひとりだ。そして、この想いは小説ではなく表題に挙げた映画時評集から来ていると思う。今日はこの二冊の紹介だ。
Running Pictures―伊藤計劃映画時評集〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者:伊藤 計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/01/25
- メディア: 文庫
Cinematrix: 伊藤計劃映画時評集2 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者:伊藤 計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/03/22
- メディア: 文庫
コンセプト
この映画時評のコンセプトは次のようなものである。以下引用:
面白い映画を面白かった、という。
このページでいろいろ書いていることは、結局そういうことだ。
(中略)
ぼくが好きな映画の感動を、あなたにも分かってほしい。そして、これはあくまでおまけだけれど、物語とか役者とかそういう感動のほかに「長い移動撮影にぞくぞくする」とか「この光の具合とってもきれい」とか「この編集って経済的でかっこいい」とか、まあ、そういったいろいろな種類の感動の「間口」をあなたの中につくることができたなら、ぼくはとても得した気分になれるんだ。
僕はこのコンセプトをついさっきベッドの上で読み直すまで知らなかったのだけれど、実は僕がこのブログにものすごくてきとうな映画の感想を書く目的に類似している。理由は簡単で、僕はこの本に書いてあるような映画の感想が書きたくてブログに映画の感想を書き始めたからである。
しかしコンセプトを知らなくても、彼の文章を読んでいるだけで目的が分かってしまうわけだから、恐ろしい人だ。本当に。
おすすめポイント
本屋に行ってもしも立ち読みするなら、この項を読んで欲しいというのをひとつ紹介する。一巻の第26回、「アイズ ワイド シャット」である。
僕自身はこの本で読んだ二年ほど前、DVD を借りてこの映画をみた。この項に書かれている文章はこの映画のあらすじ、魅力、背景に至るまで過不足なく伝えられていて、ただただ素晴らしいの一言。この感想を読んで興味を持ったらこの映画自体も是非見て欲しい.*2
あなたが遺作としたこの作品が奇しくも、これまでのディスコミュニケーションものから遠く離れた、ささやかな希望と愛情に彩られた物語であるとは。その人生の退場の演出としてはいささかメロドラマ過ぎじゃありませんか、スタンリー。(後略)
こういう導入で感想記事を書けるようになりたい、そう心底思う。
自分の話
少し自分の話をしたい。僕は学部3年生の前期にこの本を一応読んだ。ぼくは当時図書館を利用することが多かった。図書館というのは大学のものではなく、市の公共施設の図書館などである。*3そこでこの二冊を借りて、そこに書いてある映画を観るようになった。もちろんそもそも興味がわかなくて見なかったものもあるし、見たかったがレンタルDVDなどでは見つけられなくてまだ見ていないものもある。
ここで上に引用した映画の楽しみ方の「間口」……「この音響すごく怖いな」とか「一人称視点で恐怖感が倍増するな」とか、そういうことを考えながら映画が見られるようになった。誰でも最初からできるわけではないと思うが、自分が人一倍映画に興味があるからやれるようになったことだとも思っている。
余談
一巻の最後の項「グラディエーター」を読んで、彼が生きていたらきっと「マッドマックス 怒りのデスロード」に熱狂したのではないか、と思った。きっとイモータン・ジョーが作った世界を食い入るように見て評価しただろう。
まとめ
とりとめのない感じになってしまった。
面白いものを面白いと言う、好きなものを好きと言う。それは僕が常に心がけていることで、他人の評価で自分の評価を決めるのでなく、自分が好きだと思ったら、仮に別の映画批評サイトで5点だろうがなんだろうが満点だと言えるように、そして満点な理由を言えるように、映画を見ていきたい。そのためにもこの二冊はもう一度読み、また映画を見られるようになりたい。