Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

ハーモニー

一度は読んだはずなんだけど、内容が一切思い出せない小説というのがそこそこある。一度は見たはずなのに全く内容が思い出せない映画があるようなもので、それは決して珍しいことではない。

僕にとってそういうもののひとつに『ハーモニー』がある。

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

御冷ミァハという字面は日本語でしかないのにとても日本人には発音できなそうな名前の少女が出てくる、ということ以外何も覚えていなかった。ちょっと気が向いたので読み直すことにした。気が向いたのは 3 か月くらい前だったのだけど、実際に読み始めたのは昨日である。

読み始めていかにも健康的な話が頻繁になされた反動で、自分もビールを片手にポテチを食べながらこの記事を書いている。


結論から言うと、面白いけど好きではないなと感じた。

本当に何も覚えていなくて、初見のように楽しめた。めまぐるしく変わる舞台、上司との小競り合い、葛藤を抱える主人公。何から何まで鮮烈で、スリリングだった。

本当に面白い。僕が言うまでもなく物語として一級品であり、この上なく人を惹きつけるストーリーだと思う。

でも、好きだとは思わなかった。それはきっと自分の問題で、作品の問題ではない。きっと、一度読んだ自分もそう思って、そしてこの話を全て忘れたんじゃないかという気がする。


なぜ好きではないと感じるのか、説明するのは難しい。

それはきっと、自分の生き方、自分の思想といったすごくパーソナルな(プライベートではない)部分に根差している。

単にその世界が気に食わないのかもしれない。

意志というものの考えに齟齬を感じるからかもしれない。

主人公の決断を支持することが僕にはできないのかもしれない。

なんにせよ、なぜそうした感情が存在するのかを説明するのは難しい。いまの僕にはできないだろう。


自分は『虐殺器官』はとても好きだし、From Nothing, With Love とかも好きである。

The Indifference Engine

The Indifference Engine

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: Kindle版

また、映画評論も好きでこの2冊はことあるごとにいろいろな人に紹介している。

でも当然、氏の作品だから無条件に好きだと言えるわけではなく。やっぱり、ハーモニーはどこか自分の根幹で否定しなければならない気がする。これを好きだということは、515hikaru という人間を否定することにつながりかねないような、そんな気がする。

全てを忘れた、なんて言語化からは程遠い極地よりかは進歩しているのだけど、もう一度読み終えても、それでも僕はこの作品について語る言葉を何も持てないでいる。それだけが、この再読の収穫。