好きな小説はなんだろうと自分で考えてみた. 真っ先に思い浮かんだのは2作品だった. だから両方ともに紹介してみる.
そして両方共に短編だ. 私は短編小説が好きだが, あまり自分から短編を読もうと意識することは少ない. なのに本当にこの作品は好きだと思えるものは短編に多い気がする. なんでだろう.
なお情報量は極限まで 0 に近づけたので, 僕がその作品が好きなことと作品名と収録されている本の情報以外はおそらくこの記事からは読み取れないと思うので, 作品を買うなり図書館で借りるなりして読んでもらうのが良いと思う.
その1: 僕は秋子に借りがある
- 作者:森 博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/07/15
- メディア: 文庫
僕のこれまでの人生で最高にミステリアスでトリッキィな思い出を教えよう。
この一文から始まる文庫本で 50 ページにも満たないこの短い作品は, 主人公の少し性格の悪い語り口で秋子との思い出を語る. ただそれだけの作品である. しかし, これが読み終えると*1震えが止まらないのだ. いつも, いつも.
これを初めて読んだのは確か中学校三年生か高校一年生だったのではないか. つまり 7 年ほど前になる. 私は当時は森博嗣の S&M シリーズを読みきって満足していた頃ではないだろうかと思う. そして, その時間をかけて読んだ S&M シリーズを思い出にしてしまうくらいには, この作品は私にとって衝撃的だった. きっとこれ以上の衝撃を一生他の小説から得ることはないだろう.
それはまさしく, トリッキィでミステリアス. 一度ご体験あれ.
その2: From the Nothing, With Love.
The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)
- 作者:伊藤 計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/03/09
- メディア: 文庫
いま劇場で ProjectItoh しているようだし, 『虐殺器官』も『ハーモニー』も『屍者の帝国』もすごく話題だろう. それを敢えて避けるわけでは全く無いのだが, 私はそれら長編よりもこの作品もほうが好きだ.*2
From the Nothing, With Love は短編であり, そして傑作だ. 本当に面白い. 面白すぎてコメントすることがない. 長編でもとうぜん遺憾なく彼の辣腕は発揮されているが, この短編は最高だ.