Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

孤独と数学

なんか大それたことを書くようなタイトルだが、そんなつもりは毛頭ない。

最近、Grothendieckの著作、『収穫と蒔いた種と 数学者の孤独な冒険』を買って読んでいる。といっても、まだプロムナードさえ読み終わっていない。

Grothendieck自身が、本書のことを急いで読むものではないといっているので、自分のなかで少しずつゆっくりと読んでいこうと思う。ストレスにならない程度になるべく考えるようにしながら。

数学者の孤独な冒険―数学と自己発見への旅

数学者の孤独な冒険―数学と自己発見への旅

まだプロムナードも読み終わっていないというのに、Grothendieckの言葉の重さというか、質の高さというか、繊細さというか、うまく表現できないのだが本書の「深み」のごく一部を味わった気持ちになっている。Grothendieckは本書の中でこの本をワインに例えて、樽の中の最初の一杯がダメならばその樽がだめなのだということを書いているが、少なくとも僕にとって「最初の一杯」は十分美味だったようだ。

Grothendieck自身は25年もの間数学に心血を注いできたそうだ。なんとなく自分を振り返ってみると、僕自身はたった4年と数ヶ月間、しかも数学にのめり込んでいない時期もあるのでおそらく総合すると4年どころか3年程度しか数学にのめり込んでいた時期がないと思う。僕はその3年間で特に何かを為すこともなかった。

ただ、楽しかったとは思う。Grothendieckの孤独に比べれば僕の孤独など小学生のおままごとかもしれないが、どうしても数学をしている間は孤独だ。その孤独は自分の創造性を誰に見せるでもなく遺憾無く発揮できる場所だったし、逆に自分の無能さを露呈させる場でもあった。でも総合的にはやっぱり楽しかった。

孤独であることは何も悪いことばかりではない。孤独でなければ、こんな楽しい時間を過ごせやしなかっただろう。

たまに今も数学書を開きいて数学と向き合っているのは、学生時代のノスタルジーもあるかもしれないが、孤独の時間を作るためかもしれない。