Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

『君だけが光』を読んだ。

君だけが光

君だけが光

世界は不思議に満ちている。例えば、自分の顔を自分でみることはできない。自分の身体の不調を、病気を自分で診断することはできない。そして、自分が何を好むのか自分が冷静に説明することもできない。敢えて傷つくことで、心を抉られてでも感じたいそれが、読みたいそれが、想像したいそれが、味わいたい感情があることを、どうやって言葉にすればいいのだろう。

否、説明など必要ないのかもしれない。

たった数ページの繰り返し。その二人の決して幸せでも順調でも感情移入ができるわけでもないその関係性に、その関係性の変遷の機微に、心を奪われる。心のどこかで、時に傲慢と承知しながら幸せを願い続ける人たちの姿に心を奪われる。

この体験に、言葉など必要ない。

この気持ちに名前をつけることもできない。

それがいまのわたしにとってはかけがえのないものだった。ただそれだけ。