久しぶりの映画記事
薬指の標本という映画をみた.
フランス映画であるが, 実は原作は日本人によるもの. 『博士の愛した数式』 などの作品で知られる小川洋子さんの作品が原作になっている. 監督も女性で, フランスの女性監督ディアーヌ・ベルトラン氏により映画化されたそうだ. このタイプの話は共感するとしたら女性が多いだろうなという感じがあるので, 女性監督がメガホンをとったというのも合点がいく.
- 作者:小川 洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/12/24
- メディア: 文庫
この映画, なかなか毒が多分に含まれているのと, 先にも書いたが女性向けなところがある*1のと純文学的な 「何かが起きていそうで何も起きていない」 感じが結構強くてコメントするのがなかなか難しい. でも少しだけ頑張ってみようと思う.
あらすじ
ある日, 飲料工場で働いていたイリス (オルガ・キュリレンコ) は, 事故で薬指の先を失ってしまう. そのことを理由に工場を辞職し, 職を求めて放浪. 最終的にたどり着いたのは, 夜勤の男コスタ (スタイプ・エルツェッグ) と共有する宿の 5 号室と, "標本" を作るラボの受付の仕事だった. イリスはそのラボの所長である標本技術士*2 (マルク・バルベ) に惹かれ, 不思議な関係を築いていく……
フランス語
フランス語というだけで 3 割り増しくらいかっこよく思える. なかなか卑怯な言語である. フランス映画なのでフランス語で会話がなされるのは当たり前なのだが, 口説く一言一言がかっこいい. 字幕を意味はわからないが, 日本語だと言えないセリフがいくつもある. 映画をほめているわけではないけれど, ぜひ吹き替えでなく字幕でみてください.
執着からの解放と自由
早く脱がないと, 一生捕らわれものだよ
自由になりたくないの
かなりラストシーンに近い, 核心をついたセリフだが, このセリフだけではネタバレにならないだろうと思ったので引用した*3.
自由になりたくない, それはどういう意味か. この物語はそれがすべてだと思う. 標本を作るということはどういうことか. 呪縛や執着から解放されて自由になるとはどういうことか. そしてイリスがとった行動の意味とは……ここが物語の核心で, そしてすごくこのラストシーンが女性的なのだ. だから男性の私にはわからない, と逃げ出したい.
少し頑張るとするなら, 標本を作るという行為は客観視するという行為でもある. 自分の主観のイロメガメを通してモノを見つめると, 自分では制御できない感情に襲われたりするものだろう*4. そうしたことから逃れたい, 自由になりたいという感情がある. しかしたとえば恋などは真逆ではないだろうか. 今の恋する気持ちのイロメガネを通して 3 割り増しにかっこよくなる彼氏をいつまでも保存しておきたいという感情もあろう. それは自由になりたくないことの表れではないだろうか. この場合標本は, 人を不自由にするツールとしての意味を, 想いや自分を閉じ込めるという意味を持つのではないか.
ほとんど推測だ. 本当に全然わからない. これは私には難しすぎた.
結論
もし女性の方で興味を持った方がおられましたら是非鑑賞してみてください. で, ぜひ, 「そーじゃねーよバーカ」 とこの記事に反論してください.