Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

叶わなかった願いと、新しい世界

それが例えば誰かの望みだとして。

それが例えば誰かの願いだとして。

それが叶ったんだとして。


兄の嫁と暮らしています。という漫画の8巻を読んだ。

読み始める前から、なんとなくわかっていた。8巻ともなれば、何かしらの佳境だったり、何かしらの困難だったりが現れても何もおかしくないと。

そして7巻の終わり方からして、それが8巻で訪れることになんの不思議もなかった。

1巻から7巻まで、一見コメディ調でありながら、それでもどこか心にナイフを刺すような、鋭い表現やセンシティブな展開がこの漫画の魅力のひとつだ。

3巻の終わりはふたりでお風呂に入るシーンなぞありながら、すれ違いから一触即発の展開へと急転直下する。

なんでもない会話の流れにあるひときわ浮ついた一コマで、主人公の深層が垣間見えることもある。

そんななかでも、目の前の日常はゆるぎないものだと、多少の変化はあれどこの かたち で毎日が過ぎていくのだと、そう思わせてくれていた。

しかしこの8巻は、そうではない。

ここから先は、まだ知らない世界。
ゆっくりと、けれど確実に、進んでいけると、信じている。 (帯より引用)

そう、もう後戻りはできなくなった。今までの世界は、もうない。

これからも、今までとは違うけれど、進んでいけると信じるしかない。

信じるしかない。


それが例えば誰かの望みだとして。

それが例えば誰かの願いだとして。

それが届かなかったとして――


都合のいいことばかり起きるわけない。いつまでも平和とは限らないし、いつまでも いつもの日々 を過ごせるわけじゃない。

それでも、前を見る。少しずつ、前を向いていく。時間をかけてでも、ゆっくりとでも。

それができると、信じられるということ、信じ続けるということ。

それが、希望と呼ばれているものではないだろうか。