自分は昔からマイノリティだった。いつからか、なぜなのか。それは僕にはわからないし、きっと僕以外の誰にもわからないと思う。
でも自分は確実にマイノリティだ。日本社会の男性がマイノリティなわけがないと笑うかもしれないけど、僕には確信がある。程度の差はあれ僕は絶対にマジョリティではないし、マジョリティであるみなさんが羨ましい。
2020年、冬から春にかけて。感染症は人々の居場所をどんどん奪っていった。それは職場だとか、夜の街だとか、病院だとか、ところ構わずあらゆる人たちの場所を奪った。僕らもその被害者だ。あらゆる人が被害者だ。
しかし梅雨、夏を迎えようというこの時節になり、多くの人にとっては日常が戻りつつあるようだ。だけど緊急事態宣言下であっても、この夏であっても変わらず、戻ってこない場所がある。ライブハウスだ。
Twitter で#ライブハウスをなくそう というハッシュタグを見た。
そのときに、何の怒りも悲しみもなく、あぁまたかって思ったんだ。ライブハウスは僕が行きたい場所のひとつだ。有名なバンドのZepp Tokyoでのライブも、少し力をつけ始めたバンドの渋谷クアトロでのライブも、よくわかんない歌舞伎町や新木場のライブだって、僕の楽しみのひとつであり、僕の楽しみが提供される場のひとつだったんだ。僕の居場所だったんだ。
どんなに嫌なことがあったって、どんなに辛いことがあったって、音楽だけはいつもそばにあった。受験勉強にくたびれてた日々も、振られて泣きながら乗った帰りの電車でも、仕事でヘマして凹んだ日も、音楽だけは癒やしだった。音楽を聴ける場所が、音楽を感じられる場所が、僕の居場所のひとつなんだ。そこは僕の大切な場所なんだ。
だけど同時に、僕の居たい場所は、みなさんが嫌う場所なんだ。だって僕はマイノリティだから。僕と意見を同じくする人は決して多くないから。またいつもどおり正義の名のもとに迫害されて、僕はまたひとつ居場所を失って次の居場所を探すんだ。
正義は残酷だけど、正義ほど簡単に自己陶酔に浸れるものもそうないから、仕方ない。
そんな風に思っていた矢先、こんなニュースが飛び込んできた。
政府より発表の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針をもとに作成された会場のガイドラインに従いますと、開催日となる7月18日時点では「椅子席100名まで」での開催となり、これまで通りのスタンディング形式での開催は不可能と判断いたしました。
すでに100枚を大幅に超えるチケットを販売済みであることから、やむなく公演中止という判断もありましたが、この日がCIVILIANにとって周年の記念日であり、その重要性を考慮し、上記のガイドラインに沿った形で開催をさせていただくことを決断いたしました。
開催にあたり、多くの購入者の方の中から来場者を絞ることは公平性に欠く恐れがある為、いったん全てのチケットを払い戻しさせていただき、再度ウェブ抽選によるチケット販売をさせていただく予定です。
最初に見たとき、正直読まなかった。どうせ開催中止か延期の連絡だと思ったんだ。あとで払い戻し方法をよく読もうくらいの感覚だった。だけど、よく読んでみたら違ったんだ。やるといっている。人数はあまり収容できないけど、それでもやると言っている。
目を疑った。今まで通りとはいかないけれど、それでも僕らの生活にライブが帰ってくる。
率直に言ってとても嬉しい。どのバンドのLINE公式アカウントも延期と中止とグッズの通販しか連絡をよこさないのに、自分の好きなバンドのひとつがこんな状況でもライブをやると言ってくれた。それだけで僕は本当に嬉しい。それだけで僕はCIVILIANを知っていて、CIVILIANを好きでいて良かったと思う。
もしかしたらもっと早くに動いていたバンドもあるのかもしれない。僕が知らないだけで。だけど、僕にとってはこの人たちが初めてだった。
この数ヶ月、奪われることに慣れきって、失っていた感情がやっと舞い戻ってきた。まだ僕の居場所はなくなってない、失いたくないし、誰かに奪われるなんてたまったものではない。
ありがとう。100人の枠だとさすがに抽選当たらない気がしてならないけど、この状況でライブをやってくれるだけで俺は本当に嬉しい。当たらなくても俺は嬉しい。
また国の大方針転換があるかもしれないし、本当に開催できるかは実はなんとも言えないかもしれない。未来は誰にもわからないからね。
だけどこの暗黒ではないにせよ、夢も希望も自分で作り出すしかないハードモードの世界で、やっと誰かに希望の光を見せてもらえた、そんな気がしてるんだよ。
本当に、ありがとう。この数ヶ月で、一番嬉しいニュースだった。
TVアニメ「魔王学院の不適合者」PV公開 !! OPテーマ：CIVILIAN「正解不正解」 2020年7月4日（土）より放送開始！
