行ってきた。
会場は LAPRAS さまでした。勉強会は基本ブログ枠で参加している*1わたしなので、今回も感想を書きます。
ちなみに当日の Twitter への実況投稿は下記にまとまっています。
参加動機・モチベーション
自分はこのブログを含めてじつは4箇所くらいに文書を公開しており、そこそこ継続的に投稿しています。一方で、技術記事の発信を継続的にできていますか、と言われるとそうでもないです。わたしの Qiita のアカウントを見れば頻度は別に高くないことがわかるかと。
あとあまりエンジニアブログ作って成功させたよという事例を聞いたことがないので、うまく行っている(と思われる)会社がどんな運用をしているのかを知りたい、というモチベーションで参加しました。
会の流れ
- 会場説明、乾杯
- 会に来た動機を隣の席の人と話す(アイスブレイク)
- 会場提供・主催のLAPRASさんの紹介
- ゲストのご紹介
- クックパッドさん
- スマートキャンプさん
- パネルディスカッション
- 質疑応答
- 懇親会
会場提供・主催のLAPRASさんの紹介
主催の動機
もともとこの会は、下記エントリの作者が企画したものだそうです。
上記エントリでは、テックブログの運用を継続的にできている会社さんをランキング形式にて発表しています。この会を企画したときに、そのランキングにて上位だったクックパッドさんとスマートキャンプさんにパネラー候補としてお声がけをして、お越しいただいたとのこと。
会場には個人、企業を問わずテックブログについて悩んでそうな人がたくさん集う会でした。
ゲストの紹介
クックパッド株式会社 買物事業部部長 勝間 亮(かつま りょう)
クックパッド開発者ブログを運用しているクックパッドの方です(プロフィールは connpass のページを参照)。
クックパッドさんには他にもブログがあり、note.com にはクックパッド マートという新規事業の開発に関する記事や、デザインチームによるマガジンなどもあるそうです。
スマートキャンプ株式会社 プロダクトマネージャー 笹原 悠馬
SMARTCAMP Engineer Blog を運用されているスマートキャンプの方です(プロフィールは connpass のページを参照)。
エンジニアチーム10人という少人数ながらも、テックブログの継続的な運用をしているというなかなかハードなチームです。下記にエンジニアブログを始めてからの気づきがまとめられています。
他にも職種(チーム)ごとにブログがあるそうで、現在エンジニアブログも含めて5つのブログがあるのだとか。そもそもエンジニアの比率が全社的にも少ないので絶賛採用中だそうです。
パネルディスカッション
おおまかに、
- 始めた契機、理由
- 運用方法
- メリット
- 躓いたとき、挫折しかけたときどうしたか
という4つのテーマで話されました。
以下(ク)と書いたらクックパッドさんの話、(ス)と書いたらスマートキャンプさんの話です。なにもなければ両社共通の話か、わたしの感想です。
ブログ運用の立ち上げ経緯
もともとは各社ともに「エンジニアへの認知を獲得するため」の施策の一環という位置づけだったようです。
- (ク)2008年に開設。当時のクックパッドは主婦は知っているけど(男性が多い)エンジニア界隈には知られていない会社
- エンジニアの認知をあげる施策の一環として開始
- (ス)2018年の末に開設。BtoB, SaaS のビジネスであって、こちらもエンジニアに知られる機会が少ないという課題意識
- ただその他にも複合的な理由があって始まった
- ブログで社外へ発信したい人がいたこと
- 他職種の人がブログを立ち上げていたこと
- 社内ドキュメント整備が追いついておらずブログも活用できるのではないかという仮説があったこと
やはりエンジニアに向けて認知、プレゼンスを上げるというモチベーションが大きいようです。
社内運用ルール
- (ク)当時のCTOによるトップダウンの施策を契機に、運用ルールが決まって行った
- ある年に当時のCTOがトップダウンで、エンジニアに業務の一環として書かせる施策を始めた
- それまで4, 5回は更新が止まっている
- 業務が忙しい、書くことが浮かばないなど様々な理由で後手になりがち
- テックブログを更新する当番表を作成
- そのためにおみくじプログラムを作ったそう
- 更新ができていないと、エンジニアの全体会議で指摘される
- 年に1回は最低当番が回ってくる
- (ス)テックブログ運営(3人)が主導して更新を管理する
- 誰が何を書くのかのアサインをし、一ヶ月先までは更新内容が決まっている
- 業務が忙しいなどあれば運営がピンチヒッターで書く
- 2019年は3人の運営で30記事投稿している
- 何を書くか戸惑ってしまう人もいるのでネタ出しに寄り添う
- (もうやってないけど)ブックマーク数を基準にインセンティブの用意をかつてはしていた
- 100 はてブいったらスシをおごってもらえるみたいな
- どんな運用をしていくかをブログ運営班が定例会議をしている
- マーケティング的な視点でデータ分析をする、それを運営が楽しんでいる
- この時間はブクマは伸びるとか
- マーケティング的な視点でデータ分析をする、それを運営が楽しんでいる
特にこの項目ではスマートキャンプさんの内容が盛り沢山でした。CTOとエンジニアの運営という差はありますが、トップダウンによる施策で欠かさず更新をさせるルールを作っているようです。
とはいえ、特にスマートキャンプさんのように、人員がそこまで多くない場合はどうしても穴が空きそうになるのを(頑張って)埋めるという地道な努力がなされているのだなと思います。
テックブログの効果
- (ク)採用に対して影響が非常に大きい(中途・新卒含め)
- 7, 8 割ほどの求職者がテックブログで興味を持っていただいている
- 社員の日々のアウトプットがテックブログのためのものになっていると感じることがある
- 社内ブログは小出しのネタが多く、その集大成みたいなエントリがテックブログに上がる
- (ス) 面談で「テックブログやってるところですよね?」というのがちらほら見受けられるようになった
- ブログ経由での採用はまだ実現できていない
- ブログに開発プロセスを載せることで、ブログが面談とか採用活動で使える
- 自分たちの記事が自分たちにとっても役に立つ
基本的にはモチベーションがエンジニアへの認知獲得であるように、やはり採用への効果が大きいようです。一方で、社外への発信でありながら、社員が使えるドキュメントのような存在になっているのはとてもいいなと思いました。
苦労話、失敗談など
- (ク)ネームバリューがついてしまっているブログを書く敷居が上がっている
- 1 記事書く重圧がスゴイ
- 投稿前に自発的にレビューがされている(GitHubなどで)
- むしろレビューを通さないと不安
- 気軽に書ける、というスマートキャンプさんがちょっと羨ましい
- (ス)どう改善していくかが見えていなかった時期が一番大変だった
- 特に初期の 2, 3 ヶ月目がつらかった
- 現時点での苦労話というより、これからいかにして会社のブランディングに寄せていくかが課題
- 今まではブログをやってみることが目的だった
- 認知度をあげる、アクセスを増やす
- 今後は会社のブランディングという新たな目的を持って運用していかないといけない
モデレータ、参加者からの質問
会場からの質問です。
Q テックブログをやろうと思ってやってみても、なかなか人がついてこない。人を巻き込むにはどうすればいい?
- (ク)トップの力がないと難しかったと思う
- ブログを書かない = 仕事をしていない、という運用ルールがつくれたから継続できている
- (ス)運営が複数人いたのがよかった
- ひとりだと回せなかった
- 穴を開けない、という意識が重要
- (ク)トップの力がないと難しかったと思う
Q KPI は何に設定している?(PV、はてブ数など)
- (ク)特になし
- 今年はてブが多かったもの、CTO賞みたいなのはあるが、そうした数値が低いからフィードバックがあるとかはない
- 記事を出すこと、記事を出し続けることが重要
- (ス)PV数、はてブ数は見ているがKPIとして設定はしていない
- はてブ数を当初を置いていたが、会社のブランディングとは違う指標
- むしろ ブランディングができていることを測るための KPI をどこに設定しよう?といま悩んでいる
- たとえばオーガニックサーチからの流入を見ている
- (ク)特になし
- Q 記事内容がかぶるのは気にする?
- (ク)一切気にしていない、被って困ったと聞いたこともない
- (ス)事前に内容をある程度決めているのでかぶることはない
- 記事のネタが思いつかない、のほうがケアすべき問題として頻度が高い
- Q ブログを書くことの評価をどうするのか?
- (ク)人事評価の項目として社内外へのアウトプットを見ている
- テックブログも対象 *ブログ以外は OSS, カンファレンス, イベント登壇などを推奨
- (ス)特に評価には利用されていない
- 記事を書くことが目標(Jr.)という評価基準の人もいるし、アウトプットできて当たり前な人もいる
- 目標とか人事評価項目に明確には組みこまれていない
- (ク)人事評価の項目として社内外へのアウトプットを見ている
- Q 海外向け発信はされているか
- (ク)国内のテックブログでは海外向け発信はやっていない
- 海外エンジニアの採用はイギリスとか海外拠点でやっている
- ただ海外のブログ記事には今回の登壇者はタッチしていない
- (ス)全くなし
- (ク)国内のテックブログでは海外向け発信はやっていない
このような質問がなされました。KPIを特に設定していない、というのが個人的には意外でしたが、一方でエンジニアブログのPV数が伸びた、ブックマーク数が伸びたからといって何かを表しているわけではない、というのも経験的には納得が行きます。ブログでもって何かを評価するよりも、ブログを続ける、記事を書き続ける、ということのほうが重要ということでしょうか。
懇親会
何人かとお話したのですが、共通して話題に上がったのは「会社の」テックブログに投稿するエンジニア(個人)のメリットってなんだっけ、という会話を何度かしました。実際わたしも技術ネタを書く時に会社の許可をとって〜とかやるくらいなら自分のブログに勝手に書きます*2。
それこそクックパッドさんのように「内容無関係にそれなりの人数に読まれる(可能性が高い)ブログに投稿する」という状況があれば、会社の名前を利用して自分の記事をアウトプットするチャンスであるわけですが、そうでもない会社であれば個人のQiitaだとか、個人ブログによるブランディングに時間をかけるほうが合理的じゃないか*3、という意見を複数耳にしました。
正直あんまり回答が自分でも見出だせてない問いですが、どうすればいいんでしょうね。
懇親会は途中、シャッフルタイムが二度ほどあり、話していない人と話す機会を作りやすくて個人的には助かりました。どうしても全体的に人の動きが硬直化してしまうので、何人かと話せてよかったです。
感想
ちょっと暴論ですが、個人で技術ブログを続けるノウハウとあまり変わらないなと正直思いました(自分が実践できているかは別にして)。ブログというメディアはとても手軽で、わたしも5年くらい続けているわけです。じゃあそこで工夫しているのは何かと言うと、「とにかく書く」ことだけです。今は「最低月に1回はブログ(ここ)」を更新するというルールだけ自分に課しています。それ以外はほとんど何も決めていません。
ブログは「やったから〜〜が達成できる」とか、「やらなかったら〜〜というデメリットがある」みたいなものが見えにくく、続けるモチベーションが湧かず、やめる、書かないという意思決定をするのは簡単という構造があると思います。なので軌道に乗るまで*4ひたすらPVもはてブ数も一切無視してとにかく「書くことを続ける」ことだけ意識しています。
そして企業ブログも、会社の名を冠する以上ある程度の内容担保はあるとはいえ、やっぱり最も重視するべきことは書き続けること、穴をあけないことなんだなと思いました。やはり定期的に更新しているメディアということはそれだけでなんとなく安心感があるものです。OSSの Last commit が 2015 年で終わってたらたぶん見なかったことにするでしょう?
SNSの時代になって毎週更新しているサイトを、毎週見に行くみたいな習慣が薄れている人(そもそもそんな習慣を持ったことがない人)は増えていると思うんですが、それでも更新し続けることが何かにつながるかもしれない。そして実際に何かにつながった例がクックパッドさんやスマートキャンプさんのテックブログだったのかなと思いました。
最後になりますが、素敵なイベントを企画してくださった LAPRAS の両角さんありがとうございました。そして自分たちの経験談を包み隠さず話してくださったパネラーの方々、ありがとうございました。