Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

ぬるくなった缶コーヒー

思い悩んだときは空を見上げる。そこにあるのはだいたい夜空か月か。

今日の月はきれいだった。それだけで人生を前向きに捉えることもできるし、何かを決心することもできる。人は、いや、わたしは存外感情的な生き物だ。今日は特に何も決心しなかったけれど。

最近は過去のことを思い出すことが多かったので、高校時代の感傷に敢えて浸ってみようと缶コーヒーを自販機で買って夜風を浴びることにした。自販機の前で男女がキスしてた気がするけど、見なかったことにした。自動販売機の缶コーヒーは買った直後はすごい熱いくせに、5分もしないうちに冷めることを知っている。

隅田川を掛かる橋を歩いていると、風が心地よくて、そのかわり熱いスチール缶がすぐに冷たくなる。川は静かで、むしろ高速道路を走る車のほうがよっぽどうるさい。静謐とは程遠いが、しかし、悪くない空間がそこにはあった。

京都に住んでいた頃は定期的に名前も忘れたある橋の上から景色を楽しんでいた。そこで暖かい飲み物を飲んだり、ただただぼーっとしたりもした。鴨川と月のコントラストは、人生の何もかもから解放してくれる気がした。東京に来てからもあそこより居心地がいい空間は見つけられていない。

無駄に明るい景色と特に変化のない水の流れを見ながら缶コーヒーを飲む。空を見上げたらオリオン座も見えた。わたしは星座はオリオン座以外覚えられない。そうか、もう冬かと改めて思い知る。

缶を捨てて家に帰る。風を浴びて少し冷静になった頭で未来のことを考えてみた。答えなんてない。情報なんてものもない。驚くほどに、何もない。でもそこに未来はあるのだと経験的に知っている。何度経験しても信じられないけれど。

やっぱり未来はある。コーヒーみたいに捨てる訳にはいかない、手に負えない代物だけれど、残念ながら未来はある。

でも、叶うなら、もしも実現するなら。時間が止まって欲しいなって、幾度となく思ったことをもう一度思った。缶コーヒーは熱いうちだけおいしいから。

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