Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

10年間の愛を込めて

10年間、同じジーンズを履いていた。

黒いジーンズで中学生のときに買った。10年前はツイッターを始めるどころか、そもそも携帯電話(今でいうガラケー)さえ持っておらず、テレビ以外の情報源は僕にとって存在せず、ブログという言葉が浸透し始めたころじゃなかったかと思う。

そんな時代に、Levi'sでジーンズを買った。今も履いている。

www.timelessclothing.jp

10年間を思い返す

10年前、ぎりぎりリーマンショックが起きていない頃。サブプライムローンでアメリカで住宅バブルが起きている、くらいのことはテレビでも報道されていた気がする。そう「気がする」程度の話で、あまり鮮明には覚えていない。

リーマンショック、民主党への政権交代、3.11、自民党への政権交代、トランプ政権の誕生……

世界は変わり続ける。僕もひとりのしがない日本人だがインパクトはないながらに密かに変わりながら生きてきた。

中学をなんとかやり過ごして、高校の間に受験勉強をして、大学生になったあともいろんなことを学んだ。数学も、プログラミングも、月給をもらうことも、今の仕事をもらうことも、全部大学時代があったからだ。

面白くはない10年だったかもしれない。しかし僕はいまこの面白くもない10年を経て、ドトールコーヒーでこの文章を書いている。

10年で変わったもの

10年前好きだったものは今はもう好きではものがほとんどだ。いや、今も好きなものが全くないとは言わないが、しかし目に見える形で残っているものは少ない。

10年まえから読み始めた作家の小説も、最近は手放してはいないもののあまり読んでいない。10年前好きだったテレビ番組は今じゃほとんど打ち切られた。10年前好きだったWebサイトはもうほとんど終わっているし、10年前好きだったゲームはもう体験版さえやっていない。10年のうちほとんどを過ごしていた地元も今は離れてしまった。10年前の友達も、今は全く連絡をとらない。

人は簡単には変わらない、確かにそうかもしれない。でも10年あれば人は変わる。自分がそう望んでやってきたはずなのに、なぜか少し寂しい。

変わらなかったもの

そんな僕の、変わり続けた10年間にも少しだけ変わらなかったものがある。そのひとつが、Levi's のジーンズだ。

今日、新しいジーンズを買った。10年前に買ったジーンズを換えようかと思ったのは、実は数週間前の話だ。裾の先がほつれているのを、見て見ぬふりをして履き続けていたのだが、そろそろ買おうかと頭の片隅にあった。

今日店員さんに教えてもらったのだが、僕が履き続けていたのは2008年に出た501、ブラックのジーンズで普通のジーンズではチャックになっている部分がボタンになっているのが特徴的なモデルだ。

そのジーンズを見ていると、思い出すのだ。中学高校時代のなんの生産性もない悩みを抱えていた時期を、変な方向に吹っ切れて妙に偏った思想を持っていた時期も(そして大学の講義でそれを全否定されたことも)、なんのやる気もでず途方に暮れていた日々を。

毎日制服を着ていた頃から、毎日私服で働き始めるまで。唯一、僕が身につけてきたものだから。

されど10年

急に交通事故にでもあわない限り、僕にも明日はやってくる。

僕はきっとこれからも変わり続けるし、色々なものを手にし、身につけていくだろう。そして変え続けるだろう。10年というのは確かにひとつの節目ではあるかもしれないけれど、これで全てが終わるわけではない。

いくら思い入れがあるといえ、10年一緒にいたこのジーンズでもきっといつか履かなくなるだろう。特に体型が変わったらおしまいだ。

それに、今日僕は新しいものを買った。それもすごく気に入っている。

levi.jp

でも買い換えたからといって捨てようと思っているわけじゃない。裾がほつれただけでまだ履けるし、大丈夫。だけど、さすがにもう現役は引退って感じかな。

10年間ありがとう、でもまだまだこれからもよろしく。