Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

岡山から帰ってきた

岡山から帰ってきました.

最近すぐ説教してしまうのよくないとか思いながら説教してしまいつつ, 食事中にクソリプしつつ, カラオケしで夜通し酒を飲んだりしたりしました. 楽しかったです.


まともな話

自由時間にいろんな話をしましたが, 学術的な話題で結構長いこと喋ったので書いておきます.

表現論の起こりについて

"表現論" というものはなんかよくわからない, よくわからないというのは理屈はわかってもそれがどんな応用, 意味を持っているのかがよくわからない, なんて思っている人が多いとは思う. 実は表現論の起源のひとつには数論があるので, 数論でどのように表現が"発見"されたか, という話をしようと思う. これは数論のセミナーで Kronecker 記号と呼ばれるもの(二次体の整数環の素数の分解を表す記号)を定義したついでで話始めたのだけど思いの外良い話になってしまったので書いておく.

Legendre 記号

皆さんご存知 Legendre 記号ですが念の為定義を書いておくと, {p}{2} でないひとつの素数, {a\in\mathbb{Z}} として


{\begin{equation}
\left(\frac{a}{p}\right) = \begin{cases}
\hphantom{-}1 & (x^2\equiv a \pmod p \text{が解を持つ}) \\\
 -1 & (otherwise)
\end{cases}
\end{equation}
}
である. これは非自明だが Legendre 記号は準同型性, すなわち等式


{\begin{equation}
\left(\frac{ab}{p}\right) = \left(\frac{a}{p}\right)\left(\frac{b}{p}\right)
\end{equation}
}
を満たす(ここには証明は書かない).

数論において方程式の解の有無は基本的な問題である. 「与えられた整数係数(有理数係数)の多項式に整数解(有理数解)はあるか」と言う問題は Diophantus 問題と呼ばれ, 一般には非常に難しいことが知られている(Fermat の最終定理でも思い起こしてもらいたい). 理由があって {\bmod p} での解を考えることに意味はあるのだが, ここではその意味には触れない.

平方剰余の相互法則

さて, Legendre 記号を計算するということは要するに({\bmod p} だけで考えればいいので) {(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}} の元に対して, その元がひとつひとつ平方数かどうかを調べれば良いということになる. ところがこれを計算するのは結構時間(計算量)が必要になる. 要は効率が悪い. そこで使われるのが平方剰余の相互法則である.

  • 第一補充法則


{\begin{equation}
\left(\frac{-1}{p}\right) = (-1)^{(p-1)/2}
\end{equation}
}

  • 第二補充法則


{\begin{equation}
\left(\frac{2}{p}\right) = (-1)^{(p^2-1)/8}
\end{equation}
}

  • 平方剰余の相互法則


{\begin{equation}
\left(\frac{q}{p}\right) = (-1)^{\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}}\left(\frac{p}{q}\right)
\end{equation}
}
ただし, ここで {p}, {q} は奇素数.

この 3 公式を使うと Legendre 記号の計算が機械的に処理できる, すなわち Legendre 記号の定義にもどって {x^2\equiv a} という方程式の解を調べなくても解の存在がわかることが重要なのである. 実演しよう. {n=-15 = -1\cdot 3 \cdot 5} は, {\bmod 7} で平方剰余かどうかを調べると,


{\begin{align}
\left(\frac{-15}{7}\right) &= \left(\frac{-1}{7}\right)\left(\frac{3}{7}\right)\left(\frac{5}{7}\right) \\\
&= (-1)\cdot (-1)\left(\frac{7}{3}\right)\left(\frac{7}{5}\right)\\\
&= (-1)\cdot (-1)\left(\frac{1}{3}\right)\left(\frac{2}{5}\right)\\\
&= (-1)\cdot (-1) \cdot (-1)\\\
&= -1
\end{align}
}
つまり, 平方非剰余であることがわかった.

発想の転換

先にも書いたように, {\left(\frac{a}{p}\right)} の値を求めるのは, 本来は {a \bmod p} の性質(つまり平方数か否か)を調べなくてはならない. ところが今の場合 {a} を素因数分解することにより Legendre 記号という単なる関数の計算をすることで平方数かどうかがわかる, つまり {a \bmod p} の元(集合の中身)を調べるよりも, その集合上で定義された(特定の)関数(今の場合は Legendre 記号)を調べるほうが平方数かどうかはずっと調べやすい. これが"表現"のひとつの例で, すなわちその集合の中身をみていてもわからないことが, その集合を定義域とした関数を調べることで見えることがある. これが表現論の着想に至ったひとつの理由であると思う.

終わりに

今回で数物合宿への参加は最後になりました(再受験とかする可能性がゼロとは言えないけどまぁ多分ないので……).
今回特に何か凄いことをした記憶はないですが, 僕のことを次回, 次次回などで合宿中にネタにしてくれる人が一人でもいれば僕が参加した意味はあったのかななんて思ってます. あとカラオケに付き合ってくださった方ありがとうございました.

またてきとうに理由つけて岡山に行きます.